定年後独立開業は可能?中小企業診断士になるとどんな仕事をするの?
将来経営コンサルタントを目指す方にとっては、権威ある資格となるのでクライアント(顧客)に与える信用度も大きく、独立開業も有利なものとなるので取得する人も多くなってきています。
中小企業診断士の業務はどんなものなのか、解説していきたいと思います。
●中小企業診断士の仕事の概要
中小企業診断士は、文字通り中小企業の経営課題を解決するための診断・助言をする専門家です。
もちろん、対象は中小企業に限るということではなく、大企業の診断・指導を行うこともできます。
中小企業診断士は、中小企業診断士制度というものが、「中小企業支援法(昭和38年法律第147号)」(以下「支援法」という。)第11条及び、「中小企業診断士の登録等及び試験に関する規則(平成12年9月22日通商産業省令第192号)」に定められており、それに基づいて経済産業大臣が登録するものです。
・中小企業診断士は独占業務ではない
”士業の独占業務”ということばを聞いたことがあるかと思います。
司法書士、社会保険労務士など”士”が付く資格を持った人しかできない業務が、独占業務ということになります。
司法書士の業務でいえば、不動産の登記は司法書士という資格がなければできないということです。
中小企業診断士の場合は、独占業務というものがありません。
中小企業の経営課題を解決するための診断・助言を行えるのは、中小企業診断士だけではなく、コンサルティングを業としている方はだれでもできるのです。
これは、先ほどの司法書士や社会保険労務士と違って違法でもなんでもありません。
法律上そのように決めているからで、”独占業務”ということばの対比として”名称独占”ということばが使われます。
つまり、資格を持たない経営コンサルタントが中小企業診断士と名乗ってコンサルティングを行うことはできないということです。
●仕事をする場合の形態
中小企業診断士の資格を取得した場合は、次のような形態で仕事をすることになります。
・中小企業診断士として独立し開業
・コンサル会社に就職し、中小企業診断士の資格を活かす
・勤めている企業内で中小企業診断士の資格を活かす
<中小企業診断士として独立開業>
取った資格を活かすには、中小企業診断士として独立し、コンサルタント業を開業する方法があります。
現在勤めている会社の仕事をしながら中小企業診断士の資格を目指している方は、定年後などのセカンドキャリアとしたいという方も多いかと思います。
資格を取得したので定年まで待てない、できるだけ早く開業したいという方もいるかもしれませんね。
でも、中小企業診断士は独占業務ではないので、開業したところでお客さんを取ることができません。
それは資格をとったばかりでは、余りにも経験不足で経営の中に潜む問題点についてコンサルティングすることは簡単にはできません。
中小企業診断士として開業するには、知識よりも経験や実績、人脈が重要でこれらが揃ってこないと仕事も回ってこないのです。
このため、独立開業前に数年間はコンサル会社などに入って経営コンサルタントの実務経験を重ねる必要があります。
その他には、週末を利用してコンサルタント活動や診断士の事務所などに勤めるなどして経験を積む方法もありますが、会社勤めで副業禁止となっていれば難しいです。
できるならば、次に説明するコンサル会社などで仕事をして、コンサルタントのコツをつかんでから開業する方法がいいかと思います。
<コンサル会社に就職し、中小企業診断士の資格を活かす>
コンサル会社で中小企業診断士を求人している場合がありますすので、応募して採用してもらう方法です。
コンサル会社では新人を育てるために、先輩の中小企業診断士とチームを組んで実際の経営コンサルタントに参加します。
初めは分からないことが多いですが、チームで活動し経験を積むことで多角的な視点が養成されアドバイス能力が習得されていきます。
行政は積極的に中小企業や小規模事業者の経営を支援していて、公的機関に勤める中小企業診断士の他民間のコンサル会社の中小企業診断士の協力も得ています。
例えば、国が設置した中小企業や小規模経営者のための無料経営相談所として「よろず支援拠点」があり、これらは全国47都道府県にそれぞれあります。
これらは、中小企業庁の外郭団体が受託・運営しているので、これらの拠点とつながりを持つことによって、実際の経営コンサルティングに携わることができます。
ここで、公的機関や中小企業の方々とのつながりを作り、コンサルに対する信頼を得ていくことで、次の仕事が回ってくるようになります。
中小企業診断士のバックグラウンドは非常に広いので、自分は”コンビニ経営が強い”とか”モノづくりの補助金申請に強い”など自分の得意分野を作っていくことで、より高度な仕事ももらえるようになります。
仕事はいつも自分の得意分野とは限りませんので、そんなときは対応できる中小企業診断士と連携を取りながらチームで取り組むこともできます。
<企業内で中小企業診断士の資格を活かす>
企業などに在職中に中小企業診断士の資格を取ったが、転職に踏み切れずに社内の関連する業務で知識を活かす方法です。
これらの方は、企業内診断士とも呼ばれています。
ある調査では企業内診断士の割合は、47.3%で最も高いといわれています。
また、日本の企業では、副業が禁止になっているところが多いので週末にコンサル会社で仕事をしたりすることはかなり難しいといえます。
このため、せっかく資格を取ったにも関わらず、コンサルティングはやっていないという方が企業内診断士の中で70.3%もいる状況です。
このことからも企業内では、診断士資格を十分に活用しきれていない状況にあるといえます。(出典:関西外国語大学 川村悟「企業内診断士の実態調査」)
●中小企業診断士の仕事のバックグラウンドは広い
中小企業診断士の仕事はどんなものかみていきましょう。
例えば会計士の場合は、会計のプロフェッショナルで主に監査業務、会計業務、コンサルティング業務、税理士として行う税務業務などが仕事として記述できます。
ところが、中小企業診断士はこのように業務を分類して書くことが結構難しいのです。
大きく言うと、中小企業の抱える問題や課題を解決するためにいろいろな面からサポートすることが仕事です。
しかし、現在の会社数の99%は中小企業であるので、その数だけ抱える課題や問題があることになり、仕事内容は実に多彩になります。
例えば、ある企業はどこに問題があるか分からない状態でしたら、一緒に問題を洗い出し、適切な改善策を提案したり、模索したりすることが仕事かもしれません。
また、会社の問題が働く人の意欲や人間関係にあるのでしたら、人事の評価制度や社員研修制度などを導入したり、改善したりすることが仕事になるかもしれません。
あるいは、経営革新、財務、販路開拓、販売促進、新商品の研究開発、在庫管理、物流管理、品質管理の問題であったりします。
中小企業診断士からのアンケートによるコンサルティング業務の上位10は次のようなものです。
1.経営革新・経営改善支援
2.販路拡大、販促支援
3.ベンチャー・創業支援
4.財務、資金繰り支援
5.人材教育、雇用、労務関係支援
6.商店街・商業集積・街おこし支援
7.情報化戦略支援
8.事業再生、再チャレンジ支援
9.ものづくり(生産管理、製品・技術開発)支援
10.国際化・海外展開支援
(出典:関西外国語大学 川村悟「企業内診断士の実態調査」)
このように、中小企業診断士はすごく広い範囲の問題に直面することになりますので、今までに経験した分野を得意分野、専門分野として確立することが重要になってきます。